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日本茶の味わいを構成する要素として、すすむ屋茶店がもっとも大切にしていると言っても過言ではない「香り」。

その香りについて、「Aronatura」を主宰し、スペシャリストとして知られる山内みよ氏と、弊社代表の新原光太郎の対談が実現いたしました。異なるジャンルである彼らが共通の世界を探求する対談をお楽しみください。

 

 

山内みよさん
幼少時代をスペイン・マドリードで過ごし帰国。アパレル、インテリア業界を経て、2007年に現株式会社アロナチュラを設立。天然香料による調香を、ホテルや商業施設、クリニックなどに演出。様々なシーンや空間に合わせ、香りによるストーリーを表現。天然成分の効能や意味を活かした構築型の調香を得意とする。自社ブランド『Aronatura』では、間伐材を用いたアロマディフューザーが林野庁後援「ウッドデザイン賞」を受賞。様々な企業の香り商材の企画製造を行う。
https://aronatura.net/

 

 

 

▪️新原  今日はお話できることを楽しみにしていました。今回の対談場所「OCA TOKYO」さんは、山内さんが館内の調香を手がける会員制サロンです。先ほどフロア内を案内いただきました。空間やエリアで香り異なり、その違いを楽しむことができます。各テーブルには山内さんが開発された除菌スプレーが置かれており、これもまた贅沢ですね。

 

 

▪️山内さん  ノンアルコールの除菌スプレーを製作しました。皆さんの手がアルコールによって疲れていることもあるため、肌トラブルのある方にも配慮した内容になっています。

 

 

▪️新原  手がアルコールで疲れている…めちゃくちゃわかります。(スプレーを使って)気持ちいいですね。

 

 

 

▪️山内さん  ノンアルコールながら、さらっとしていて手に馴染みやすいかと思います。こちらは除菌効果のある精油を使用しています。

 

 

▪️新原  なんだか潤う効果もありますね。ヒバの香りがして、これはいいですね。

 

 

▪️山内さん  同業者の多くも「ヒバは扱いづらい精油だ」と言うくらい、ヒバの香りは難しいです。確かにクセがありますが、製品にすると非常にリラックス効果があるんです。

 

 

▪️新原  山内さんは、こちらのような香りを使用した空間演出の仕事と、一般のユーザー向けにプロダクトを開発・販売されています。まずは代表的なプロダクトである「アニマルアロマ」について教えていただけますか?

 

 

 

▪️山内さん  「アニマルアロマ」は、間伐材を使用したアロマディフューザーです。販売開始から10年が経ちます。初めて開発したときは、間伐材という言葉自体が広まっていなかったため、その概念を説明しながら販売していました。幸運なことに、多くの支援を受けて、全国で100店舗以上で販売されるようになりました。この成果は非常に喜ばしいものですが、一部の卸売業者からは季節ごとに新しい形状や香りを要求されることもありました。私たちは定番商品として大切に扱いたいので、初期のデザインや仕様は変更せず、現在も百貨店やセレクトショップなどで継続的に販売しています。

10年経って、またコロナ禍もあり、香りに関する話を聞く機会が増えました。実際、私も打ち合わせをしていて、以前と比較すると説明する内容が減ったと感じています。かつては、香りといえばアロマテラピーの話から始めて、話す内容も段階を踏んでいましたが、今は香りというものが日常に大きく作用するということを、たくさんの方が認知をしているからだと思います。エコや間伐材にしても同様です。

 

▪️新原  「アニマルアロマ」は、山内さんの活動を知る窓口でもあります。「定番を作り続ける、続ける」というのは、私たちのお茶の世界でも同様ですが、なかなか難しいことですね。

 

 

▪️山内さん  止めるのは簡単ですが、今は決まった所にしか卸しておりません。調香の仕事と比較するとボリュームは小さいですが、現在もお客さまからの声は絶えず寄せられており、プロダクトとしてしっかりと存在価値があります。実際、10周年を迎えた機会に、パッケージをリニューアルし、認証を得た素材を使用してさらに環境に配慮するように進化させています。定番商品であっても、より良くするための小さな変更を加えることで、卸し先の皆様から評価されることもあります。今後も淡々と「アニマルアロマ」を続けていこうと考えています。

 

 

 

 


▪️新原  
素晴らしいお話をありがとうございます。ご自身の言葉で正確に、自信を持ってお話いただけることは素晴らしいことです。やはり、モノやサービスには人の存在が欠かせないことを再び感じました。

ここで、山内さんに当店のお茶をお試しいただきたいと思います。今日は「あさのか」という品種の茶葉をご用意しました。この品種は異なる茶の品種を掛け合わせて育てるもので、具体的には「やぶきた」という品種に中国種を交配したものです。香りにはかなりの特徴があり、個人的にはお香のような香りがすると感じます。この特徴的な香りと山内さんのことを考えて、勝手にご用意しました(笑)。まずは茶葉の香りを楽しんでいただければと思います。

 

 

▪️山内さん  本当に素晴らしい香りですね。これは…たまらなく良い香りです。紅茶のような華やかさと、スモーキーな雰囲気も感じられますね。

 

 

 

▪️新原  山内さんは調香の際にお茶の香りを利用したことはありますか?

 

 

▪️山内さん  お茶は、その香りを表現するのが非常に難しいものです。香料にはマテ茶やグリーンティーなどが含まれています。マテ茶は実際のマテ茶を使用し、漢方のような香りを持っています。一方、グリーンティーは実際のお茶から香りを抽出することが難しいため、人工的なものに頼ります。ホテルなどでもグリーンティーの香りを使用しているところはありますが、それは人工的なお茶の香りとなりますね。今日は「あさのか」の香りを楽しみながら、こんな素晴らしい香りを前にして、自分のフィールドで何かできないかと思いました。

 

 

▪️新原  本当にいいクラスのお茶になると、香りは際立ってきますね。それだけで安らぎを感じます。

 

 

▪️山内さん  今度、新たに「アロナチュラ」のラボを作ることになりまして。そこでは小ロットでできることもチャレンジしたいと考えているので、茶葉を使って試してみたくなりました。お茶からは油分が出にくいので香料にするのは難しいんですが。個人的に人工的な香料が苦手で天然のものしか使わないので、お茶の香りには携わってことなかったんです。もし実現できたらかなり特別なものになるでしょうね。

 

 

▪️新原  ちなみにお茶はツバキ科(チャノキ)なので、種子から油分を抽出しますよね。

 

 

▪️山内さん  そうですよね、椿油ですね。

 

 

▪️新原  お茶は一般的に「お茶の香り」と一括りにされることが多いですが、例えば、いちごのように、「あまおう」や「とちおとめ」にはそれぞれの特徴的な美味しさがあります。お茶も同様で、こちらの「あさのか」の他にも、「さえみどり」「あさつゆ」などの品種が存在し、香りや味わいに個性があります。品種ごとにお茶を楽しんでいただきたいという思いから、私はすすむ屋茶店を始めました。

 

 

▪️山内さん  世の中のお店にある「緑茶」のほとんどがブレンドということですよね。ブレンダーが選ぶ一つの品種が「あさのか」ということですよね。

 

 

 

▪️新原  そうですね。自分が15年前に茶業に入ったときのことです。お茶の市場に行き、それぞれの茶葉を試飲すると、ほとんど似たような味がするんです。「なんでだろう」と自分なりに調べてみると、茶師と呼ばれる方々がブレンドしすぎているんじゃないかと。この頃は「あさのか」だけ、つまり単一品種だけで売るという世界がなかったんです。

例えば「獺祭」というお酒は、「山田錦」というお米を使っていてます。「獺祭=山田錦」という認知があり、ブランドと品種が結びついてます。お茶もこのような売り方ができたら、と思っていました。最近ようやくお茶でも品種を打ち出せるようになったと思います。現在、すすむ屋茶店では、常時7種類の品種を扱っています。

 

 

▪️山内さん  品種を打ち出すということは、コーヒーでいうシングルオリジンですよね。いわゆる利き茶ができるということですね。

 

 

▪️新原  はい、もちろんです。これまで茶師という存在を立てることで、お茶の販売方法や認知度が広まってきました。教科書のような専門家が存在するため、先人たちが確立した公式を守り、多くの方が同じブレンドを作り続けてきました。つまり、多くの茶店の味が均一化してしまうこともあります。これは一般のお客様からすると面白みに欠けるかもしれません。
各茶店が個性を持ち出して、「私はA派」「私はB好み」といった声が広まると面白いでしょうが、お茶業界ではこうした多様性が生まれにくい状況です。ちなみに、私たちも二つの異なるブレンドを提供しています。ブレンドそのものを否定しているわけではなく、むしろその中で個性や考え方をしっかり伝えていきたいという思いからです。

 

 

▪️山内さん  新原さんが提案したお茶のスタイルや飲み方が、次世代にも受け継がれることを期待しています。

私は子供の頃からお茶が大好きでした。海外での長い生活経験もあり、飛行機に乗る機会が多かったため、客室乗務員からジュースを勧められても「お茶がいい」と頼んでいました(笑)。自宅では母親に「みよちゃんがお茶を淹れた方が美味しい」と言われ、家ではお茶を淹れる係です。現在は自宅で緑茶を飲むのは、私と長男。他の子供たちは番茶やルイボスティーを好んでいます。お茶を飲むという習慣が子供たちにも受け継がれています。

 

 

▪️新原  それはいいですね。子供の頃から日本茶に触れてもらえるのは嬉しいです。

 

 

▪️山内さん  お茶が好きとはいえ、ブレンドされたお茶が当たり前だったので、品種に着目するのは今日が初めてでした。

 

 

▪️新原  山内さんにように、日本茶が日常的になってほしいという思いから、この度「racu」というティーウェアブランドを立ち上げました。こちらが急須です。お茶を手軽に淹れるためのもので、その目的は便利さを追求することです。こちらが「あさのか」です。ぜひお召し上がりください。

 

 

▪️山内さん  とても素晴らしい香りがしますね。(飲みながら)これは、美味しいです…非常に美味しいです。しっかりとした渋味と深みがありながら、飲んだ後に心地よい清涼感が残ります。力強さも魅力的です。それに加えてまろやかさもありますね。そして、甘いです。

 

 

うちの母親のルーツが九州だったこともあり、彼女のこだわりから、我が家では九州産のお茶しか飲まなかったんです。大人になるにつれて、他の産地のお茶も試す機会が増えてきましたが、九州産のお茶は後味がしっかりしていて印象的ですね。「緑茶を飲んだ」という実感、その余韻がしっかりあります。今、「あさのか」を飲んでみると、同じように感じることができます。

 

 

▪️新原  その通りですね。鹿児島のお茶に関しては、産地としては後発ですが、品種の研究に力を入れており、華やかで趣向的なお茶にも注力しています。このお茶の素晴らしさをどのように伝えるかという観点から、「warenai」という急須を開発しました。これまでは本格的な急須にも取り組んできましたが、お茶を知り、手軽に楽しむ機会を提供したいと考え、プロダクトデザイナーの柴田文江さんと共にプロダクトを制作しています。ここで山内さんにも急須を使っていただきたいと思います。二煎目のお茶もお楽しみください。

 

 

 

 

▪️山内さん  (warenaiを持って)軽い…(笑)。軽くていいですね。我が家では鉄瓶を使ってるので、余計に軽く感じます。二煎目もいただきますね。あれ…味に変化がありますね。甘さは先ほどより増してます。香りは薄くなりつつありますが、ほんのりと持続していて。二煎目も面白いですね。

 

 

▪️新原  味や香りを言葉で表現できることは素晴らしいことですね。山内さんから的確なコメントをいただけて本当に嬉しいです。お茶は香りが非常に重要で、飲んでいる間もその香りを感じながら楽しんでいます。もし香りがない場合を想像すると、それはまるで「無」の状態になるでしょう。お茶の香りの質が味わいを左右します。問屋や商社が仕入れる際には基準が設けられており、外見、手触り、重さ(密度)などが評価基準となりますが、我々は最も重要視するのが「香り」なのです。これは弊社の伝統で、父親も常に「香りが良くないお茶には何かしら茶葉に問題がある」と言っていました。新しい時代が訪れ、香りがさらに重要視されることを期待しています。特徴的な香りを持つお茶がますます人気を集めるでしょう。

日本茶はブレンドが主流で、特徴的な香りはあまり好まれない傾向がありました。他の種類の茶葉と調和させる必要もあるためです。しかし、個性の強い香りは元気の証でもあり、今後は更にコーヒーのシングルオリジンのようにさらに注目されることを願っています。

 

 

▪️山内さん  すごくいいお話ですね。今回、新原さんに品種としての緑茶を教えていただき、これを何かに活かせないか私たちのラボで試してみたくなりました。

 

 

▪️新原  その際は我々でご協力できることはさせてください。いつか何かの形でコラボレーションできたら嬉しいです。

 

 

 

 

racu急須|warenaiはこちら

 

山内さんと楽しんだ茶葉「あさのか」はこちら

https://susumuya.com/?pid=88430415

 

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https://racu-teaware.com/

 

 

すすむ屋茶店の公式noteはこちら

https://note.com/susumuya/

 

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