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東西に長い静岡県の最も東にある伊豆半島の更に東の海沿いに伊東市はある。

 

ここ伊東市は通常の煎茶と違いグリッと曲がった煎茶。通称「グリ茶」の街として独自の茶商圏をつくりだしている。

 

静岡市から車で2時間。静岡県の中でも日本茶の生産が少ない伊豆半島になぜ独自の茶文化が生まれたのか。

 

グリ茶の雄として創業より伊東市にて店舗を構える【杉山製茶工場】の代表、杉山博彦氏にすすむ屋茶店の新原が話を伺った。

 

 

 

 

 

 

新原:杉山さん!こんにちは!来ましたよ!伊東に!

 

 

杉山:こんにちは。新原君テンション高いですね。雨なのに(笑)。※この日は雨。

 

 

新原:すみません。でも次々とお客様がいらっしゃって次々と茶葉をご購入されていくのを拝見して。気分が上がってきました(笑)。雨なのに(笑)。

 

 

杉山:(笑)。

 

 

新原:今日はよろしくお願い致します。それにしても本当にお客様がたくさんいらっしゃいますね。

 

 

 

 

 

※悪天候にもかかわらず次々とお客様が

 

 

杉山:ありがとうございます。ここ伊東は日本三大温泉郷の1つとされる街で観光のお客様が多いですからね。

 

 

新原:日本三大温泉郷!の1つですか。

 

 

杉山:近くに箱根や熱海などの温泉街があってここ伊東にも全国からたくさんのお客様がいらっしゃいます。同じ伊豆半島でも泉質も違っています。伊東は無味無臭の毎日入れる泉質なんです。

 

 

新原:そうでしたか。温泉いいですよね。でも観光のお客さまだけではなくほとんど地元の顔なじみのようなお客様がいらっしゃっているような雰囲気ですごく心地がいいなぁと感じます。お店作りはご自身で?

 

 

杉山:そうですね。特に店舗デザイナーのかたに手伝ってもらってないんです(笑)。

 

 

新原:そうなんですか。ではどうやって?

 

 

杉山:ここからだと箱根が近いでしょ。箱根には美術館がたくさんあるので美術館の内装造りを学びに行ってました。光の入り方とか、商品の見え方とか学ぶべきことが多かったですね。あとは近くのコンビニとか建築雑誌ですかね(笑)。

 

 

新原:光の入り方などまで!コンビニ!

 

 

 

 

※隅々まで杉山さんがデザイン。もちろん何の植物を植えるかも。ソフトクリーム美味しかった。

 

 

杉山:逆に同業店、つまり、日本茶お店を見に行くことはなかったですね。それぞれの地域やお店によってご来店されるお客様は違うと思うので。

 

 

新原:ではどんなお客様に?

 

 

杉山:やはり地域のお客様です。一番多いのは40歳~60歳くらいの女性のお客様ですが年齢も幅広くですかね。若い方からご年配の方まで。ここの店舗では地元の80歳以上のお客様が車で日本茶を買いに来てくれます。

 

 

新原:それは嬉しいですね。ではその地元のお客様に対してお店づくりを?

 

 

杉山:はい。商品パッケージやお店の雰囲気もそのお客様を意識しています。だからデザイナーをいれないのかもしれません。

 

 

新原:それはどういう?

 

 

杉山:デザイナーのかたに頼むと「かっこよく」はなると思うんですが。逆にいうと独自性がなくなってしまうような気がするんです。あくまで伊東という街にある日本茶専門店ですから。自分たちがちゃんとお店作りにコンセプトを持ってやれば外部のデザインはいらないような気がします。自分たちで商品やお店をつくっていくことが大事だと思うんです。

 

 

 

 

 

 

新原:それ大事ですね。自分たちがどうありたいか。それは扱っていらっしゃる雑貨や道具にも?

 

 

杉山:そうですね。弊社にいらっしゃるお客様は本物志向のかたが多いです。だからより専門性のあるものを置くようにしています。あとは自分たちが本当にいいと思えるもの。自分たちが楽しくないと売れないですから。

 

 

新原:茶葉に対しても?

 

 

杉山:そうですね。分かりやすく明らかに美味しい茶葉をいれてます。専門店ですからね。

 

 

新原:具体的にどういった茶葉を?企業秘密ですか(笑)?

 

 

杉山:そんなことないですよ(笑)。価格帯に寄って様々なブレンドをしていきます。ただこの茶葉は固定の品種です。とか特定の農家さんです。というような茶葉は1つもないです。農作物ですからその年に寄って様々なブレンドをしていきます。それは産地にも言えますね。

 

 

新原:ほう。それは

 

 

杉山:特定してしまうとどうしてもブレるんです。味に責任を持ってます。「杉山製茶のお茶」です。という販売方法ですね。

 

 

 

※お店に入ると日本茶を出してくれるサービスが嬉しい。

 

 

新原:一言でいうとそれはどんなお茶ですか?

 

 

杉山:最初の一口目が華やかなお茶を目指しています。だって最初が美味しくなきゃもう一口飲みたいと思わないじゃないですか。お酒の大吟醸のような華やかなお茶が杉山製茶工場のお茶です。

 

 

新原:確かに一口目から華やかです。杉山茶は(笑)。かといって後口はきりっとしていて毎日でも飲みたくなる日本茶だと思います。

 

 

杉山:ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

新原:杉山製茶工場はずっと昔からここで日本茶店を?

 

 

杉山:創業は父の頃昭和33年。会社設立は昭和58年です。始まりは「杉山製茶工場」の名の通り日本茶の荒茶加工を生業としていました。

 

 

新原:そうなんですか。

 

 

 

杉山:もともと農家だった父が茶畑に転作していったようです。実際の茶園の管理も父の弟と一緒にしていたようです。一次加工である荒茶を作るのがメインだったようですね。あと近隣の農家さんの茶葉も加工していたようです。その茶葉を販売し始めるようになったのがスタートのようです。

 

 

新原:そのころから伊東には観光のお客様が?

 

 

杉山:昭和30年代の後半くらいからバブル期に合わせるように増えていったようですね。その時は「グリ茶」ではなく普通の煎茶をつくって販売していました。

 

 

新原:えっそうなんですか!?それがなぜここまで伊豆半島は「グリ茶」の街に?

 

 

杉山:かつて静岡の牧之原の方では輸出ように曲がったお茶を作っていいたんです。それが色んな要素が重なって輸出が激減して、輸出用の茶葉がかなり余ってしまったようなんです。

 

 

 

※左が煎茶。右が「グリ茶」。曲がっているのが特徴。伊豆半島で売っているお茶のほとんどが「グリ茶」だから不思議

 

 

新原:ほう。

 

 

杉山:最初は旧ソ連向けに作っていたようです。

 

 

新原:でも確かに世界のお茶でまっすぐに伸びた茶をつくるのは日本だけかもしれませんね。

 

 

杉山:その旧ソ連でも売れなくなり、ヨーロッパでも売れなかったみたいです。その余った日本茶と困っている人たちをみて父が「普通の煎茶を売っても将来的には本場の静岡に負けてしまう。この特徴のある曲がった茶を伊東で売ろう」というのが始まりだったようです。

 

 

新原:そうなんですか!!

 

 

杉山:伊東がある静岡は東西に長いでしょ。伊東は東の端ですからどちらかというと関東圏で自由なんですよ。そして大きな産地でもないだから「売ってみよう」からスタートしたようなんです。

 

 

新原:それがこんなにも「グリ茶」の街に。すごいですね!

 

 

 

 

※いたるところに「グリ茶」の文字が

 

 

 

新原:杉山さんご自身はいつから日本茶を?

 

 

杉山:小さい頃は親が毎日、日本茶漬けでしたからね。よく職場に着いていっていていましたね。玄米茶の素を食べたり(笑)。だから幼少の時からです。

 

 

新原:学生生活を終えてから直ぐにここに?

 

 

杉山:一年間だけ静岡のお茶屋さんで修行をさせて頂きました。それから直ぐに。

 

 

新原:どうでしたか?杉山製茶工場は(笑)?

 

 

杉山:時代が日本茶から他の飲み物へ移行している時だったので、これまでのやり方に危機感を覚えました。

 

 

新原:ほう。

 

 

杉山:もっといい茶葉を直接いいお客様にと思って、すぐにインターネット通販を始めました。もう20年前のことですかね。その頃はインターネット通販が出始めの時だったのでみんなに頭おかしいんじゃないかといわれていましたね(笑)。

 

 

新原:何か反応がありました?

 

 

杉山:ありましたよ!月に1件くらい注文が。忘れたころに(笑)。5年目くらいですかね安定してご注文頂けるようになったのが。

 

 

新原:今では多くの通販のお客様がいらっしゃると伺っています。

 

 

杉山:まずは店頭にご来店いただいた観光のお客様にオンラインショップを地道コツコツ紹介していきました。それがきっかけで少しづつご注文頂くようになりましたね。美味しかったからと。

 

 

新原:そうでしたか。美味しいお茶って求められているんですよね。きっと。

 

 

杉山:僕もそう思います。

 

 

 

※オリジナルのグリ茶カステラとともに

 

 

 

新原:日本茶を販売する上で何を考えていらっしゃいますか?

 

 

杉山:ニーズとウォンツの追求です。

 

 

新原:それは?

 

 

杉山:やはりいいお茶を簡単に。というお客様の声を多く頂くんです。だからティーバッグの商品を充実させていきたいですね。全種類の茶葉のティーバッグを作りたいとまで考えています。

 

 

新原:全種類ですか?

 

 

杉山:あともっとわかりやすく販売したい。玉露とか煎茶とか蒸製玉緑茶とかわかりづらいでしょ。だからそこを簡単に。分かりやすく販売したいです。

 

 

新原:同感です。

 

 

杉山:聞かれたときにちゃんとストーリーとして説明するのはとても素晴らしいことだと思うのですが。例えば玉露はこう作るんだよ。とか蒸製玉緑茶はこうやって飲んだほうが美味しいよ。とか。でも分かりづらいのは良くない。そこのバランスはこれから重要だと思っています。

 

 

 

※多くのティーバッグ商品が並ぶ

 

 

新原:茶葉の仕入れの際に気にしていることは?

 

 

杉山:産地にいって自分で美味しいと思ってモノを仕入れる。自己満足の追求です(笑)。

 

 

新原:でもそれが一番大切じゃないですか(笑)。大事です!

 

 

杉山:それとやっぱり農作物ですから。その年ごとに違うのも楽しみといえば楽しみですしね。

 

 

 

 

 

 

新原:杉山さんはお茶好きですよね(笑)。これからの目標は?

 

 

杉山:流行に左右されない日本茶専門店であり続けること。そして「グリ茶=杉山製茶工場」といわれるようになりたいですね。

 

 

新原:僕の中ではもうすでに「グリ茶=杉山製茶工場」ですよ。

 

 

杉山:ありがとうございます(笑)!個人目標はいつかオーロラを見に行きたいです。寒い雪景色も好きなので。

 

 

新原:いいですね!ぼくも九州の人間なので寒い所に憧れています。行きましょうか一緒にオーロラを見に!

 

 

杉山:(笑)。それは結構です。(笑)。新原君は日本で最高の茶葉を提供し続けていてください(笑)!

 

 

新原:了解です(笑)!

 

 

杉山:今日は来てくれてありがとう!

 

 

新原:こちらこそありがとうございました!

 

 

 

 

※杉山さんの1年生の息子さんが編集部あてに。

 

 

 

 

 

 

 

 

杉山博彦

22歳より静岡茶市場に出入りを始め当時から仕入れ業務全般を請け負う。

静岡はもとより全国の茶産地に足を運び独自の茶葉をブレンド。

「グリ茶の街=伊豆半島」を生み出した(株)杉山製茶工場の代表取締役。

趣味はスキー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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