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the tea today no1 進化し続ける老舗 京都「一保堂茶舗」
日本茶店には歴史ある企業が多いともいわれる。 古い時代から人々の暮らしの一部に「茶」があったのだろう。
その数ある茶店の中でも、常に時代のトップを走り続けてきた茶店は京都に本店を構える「一保堂茶舗」であるという筆者の見解に異論を唱えるものはいないだろう。
300年の歴史を持ちながら、常に目新しさを感じさせる一保堂茶舗の秘密はどこにあるのか。一保堂茶舗の創業家であり専務取締役の渡辺正一氏と広報室の尾崎さんにすすむ屋茶店代表の新原が話を伺った。
新原 渡辺さん、尾崎さんこんにちは。今日はお忙しい中ありがとうございます。
尾崎 はじめまして。よろしくお願いいたします。
渡辺 ご無沙汰しております。お元気でしたか?
新原 はい。今日の僕は日本茶ファンを代表してきました!日本茶ファンの方は必ず一保堂さんのことを知ってますからね。私も当然そうでした。今でもファンですから!
渡辺 ありがとうございます。お手柔らかにお願いします(笑)
新原 はい。よろしくお願いします!早速ですが一保堂さんの歴史を教えて下さい。
渡辺 創業は1717年。現在の滋賀県出身の渡辺利兵衛がここ京都でお店を始めたのがスタートです。利兵衛が滋賀出身ということもあったため「近江屋」という屋号でした。 日本茶はもちろん、茶道具など、様々なものを扱っていたようです。
新原 様々なものとは?
渡辺 お茶にまつわる道具などですが、現在あまり資料が残ってないのです。1864年に蛤御門(ハマグリゴモン)の変というのがありまして。
新原 ハマグリ??蛤御門の変?
渡辺 明治維新の少し前の話になるのですが、薩摩藩と会津藩が、長州藩とここ京都で戦をしたようなのです。それで現在お店があるこの辺りがどんどん焼けという大火事で資料が燃えてしまったようなのです。なので、よく何代目ですかと質問をされるのですが正確にはわからないのです。
新原 薩摩が…。すみません…。
渡辺 ただそのなかで一つわかっているのが1846年に名前を「一保堂」に改めたエピソードがありまして。
新原 ほう!
渡辺 はっきりはしませんが、私たちは日本茶以外のものも扱っていたようです。が、公家皇族の山階宮様から「あなた方のお茶はとてもおいしいのだからこれからはお茶一本で商売しなさい」ということで茶一つ保つように 「一保堂」という屋号をいただきました。それから現在まで「一保堂」の名前でお茶を販売しています。
新原 茶一つ保つ!伺ったことがあります。
渡辺 そうですか。ありがとうございます(笑)。
新原 はい。でも山階宮様から頂いたものだとは存じ上げませんでした!
渡辺 明治から大正にかけては小売り販売よりも卸売りのほうで生計を立てていたようで、海外へも多くの日本茶を輸出しておりました。そして私の祖父の代から小売りに力を入れ始め現在に至るというのが簡単な歴史です。
新原 渡辺さんがお生まれになるころには今の一保堂が出来上がっていたわけですね。
渡辺 そうですね。
新原 その中で、渡辺さんはいつから「一保堂」に入ろうと?
渡辺 私は小さい頃からこの近くに住んでいて、一保堂が生活の一部になっていました。両親から「継げ」と言われたこともないのです(笑)。
新原 「継げ」と毎日いわれているかと(笑)。
渡辺 でも自然といつかは継がないと、という気持ちも出てきましたし。周りの方からもそういったことを言われますからね。(笑) なぜ、と聞かれてもよくわからないというのが素直な答えです。
新原 それは周りから見ていると自然な流れだと。でも学生生活を終えてからすぐに一保堂に戻らなかったのは?
渡辺 一つだけ両親に言われていたのが関西から一度出なさいと。それで都内の大学に入学したのですが、このまま戻るだけでは力になれないのではと思い、広告の仕事などをしていました。
新原 その頃の経験が今の渡辺さんを。
渡辺 はい。ノルマ厳しかったので(笑)。あとは、小さい会社というのが良かったですね。事務から営業まですべて経験させていただきましたから(笑)。
新原 どのタイミングで戻られたのですか?
渡辺 30歳までにはもどらないといけないと考えておりました。
新原 でも、一保堂さんは日本茶店の中で老舗中の老舗だと思うのです。いくら自然な流れとはいえプレッシャーはなかったのですか?
渡辺 正直、老舗を継ぐというプレッシャーはあまり感じませんでした。何年続いたからと言ってあまり関係ないかと、現社長が30年続けておりますが、それの連続にしかすぎないですからね。それに以前のことはどうすることもできませんから(笑)。 それよりも、今現在働いていただいている方とその家族の方の生活を背負うというプレッシャーのほうが感じましたね。だから老舗だからというのはあまり背負ってないです。あとは考えても仕方ないですから(笑)。
新原 確かに考えてもどうもなりませんね(笑)。
渡辺 そうなんです(笑)。
新原 では、今現在の一保堂さんの事を伺っていきますね。
渡辺 はい。
新原 一保堂さんはその時代の中で常に新しいことにチャレンジしているイメージがあります。今、現在なにか取り組まれていることはありますか?
渡辺 そうですね。最近でいえば木村硝子さんにお願いしてグラスを作っていただきました。
新原 見ました!すごくかっこいいですよね!
渡辺 ありがとうございます!
新原 僕はいつも一保堂さんにお邪魔するときに一保堂さんらしさを十分に感じるのですが、このグラスにも一保堂さんらしさを十分に感じます。なぜですかね。
渡辺 そうですね。最終的に茶葉から淹れる美味しい日本茶を楽しんでいただきたい。と考えております。常にそれが中心ですね。それが、そういった「らしさ」になっているのかもしれません。茶葉から淹れる日本茶はほんとに美味しいですから。
新原 その主役である一保堂さんのお茶はどのような基準で選ばれたり、製造されたりしているのですか?
渡辺 私共の選ぶお茶を一言でいいますと「伸びやかに広がる香りと奥行きのある味わい」です。日本茶を鑑定して選ぶ時もこの基準を大切にしています。
新原 確かに一保堂さんの茶葉には、自然な甘みと奥行きを感じます。それがどの銘柄からも感じるのです。そこには一保堂さんの茶葉に対しての思いとクオリティーの高さを実感します。これは自然を相手にしている以上とても難しいことです。
渡辺 ありがとうございます。でも、もっと上を目指してやりたいという意識がありますし、変わり続けていかないといけないなという危機感もあります。 ありがとうございます。でも、もっと上を目指してやりたいという意識がありますし、変わり続けていかないといけないなという危機感もあります。
新原 現在のお店造りにもそういった意識が??
尾崎 抹茶の種類だけでも数種類。煎茶でもかなりの種類がありますからわかりやすく説明できるお店にしていかないといけません。
新原 今のお店でも十分だとは思いますが!でもその危機感が喫茶室「嘉木」誕生につながったのか?その経緯は?
渡辺 そうですね。その危機感から生まれたものかもしれません。
新原 喫茶室「嘉木」はいつから?
渡辺 1995年です。
新原 そんなに前から。その頃はほとんど日本茶の茶葉を売るお店はたくさんありましたが、喫茶をに取り組んでいるお店はほとんどなかったかと。
渡辺 そうですね。始めた当時は、これでいいのか自問自答する毎日だったと祖母と母から聞いています。ただ日本茶の茶葉の販売だけではなく日本茶の楽しみ方や淹れ方をちゃんと伝えていくことが必要だと決めて始めたようです。その思いは現在でも変わりません。 なので「嘉木」では私共スタッフがご説明をさせていただきながらお客様にご自身でお茶を淹れていただくスタイルです。
新原 はい。わたくしも以前、お茶を「嘉木」でいただきましたが、お店の方が丁寧に淹れ方を教えてくれるスタイルに感動しました。これは多くのお客様に喜んでいただいているのでは?
渡辺 そうですね。「嘉木」での体験から本物の日本茶を好きになっていただければと思います。現在では定期的にお茶教室も開催しています。こちらもたくさんのかたに日本茶の素晴らしさを知っていただきたいという思いから始めました。
新原 あと感動したのは抹茶を注文すると小さなマグカップで出てきました。あっ!抹茶って緊張しながら飲まなくていいんだなと(笑)。
渡辺 抹茶というと正座して回して飲まないといけないわけじゃないですしね(笑)。このスタイルで提案することで抹茶って気軽に楽しんでいただけるのだと感じていただければと思います。
尾崎 実際に東京のオフィス街にある店舗では、多くのビジネスマンのお客様がこのスタイルで抹茶を楽しまれています。
新原 それは素敵な景色ですね。
尾崎 はい。とても素敵な景色です。お洋服を気分に合わせて変えるように、色々な茶器でそれぞれの抹茶を楽しんでいただければ思います。
新原 あと今日感じたのはお店のスタッフの皆さん生き生きしていません?
尾崎 ありがとうございます!うれしいですね。大変ありがたいことに海外のお客様も増えておりますし、プロユースのお客様も増えております。スタッフは皆、やりがいをもってお店に立てていると思います。少しでもお客様のお役に立つよう丁寧な接客をこころがけ、もっと日本茶ファンを増やしたいですね。
新原 そうですね。日本茶はとてもかっこよく素晴らしいものですから。
渡辺 お互い、お客様の為に日本茶の為に一緒に頑張りましょう!
渡辺正一 1981年4月生まれ
株式会社一保堂茶舗 専務取締役
キャラクターグッズメーカー、広告会社の勤務を経て
2010年一保堂茶舗入社。好きな言葉は「塞翁が馬」
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